voice: 20005040010 要 ちょっと違うかな。 美兎、もう少し穏やかに、柔らかい雰囲気で演じてみて。
voice: 20005040020 美兎 は、はいっ。
voice: 20005040030 いろは みとちゃん。深呼吸深呼吸、ですっ。 自分のペースで大丈夫ですからね。
voice: 20005040040 美兎 うん……。
voice: 20005040050 要 じゃ、もう一度。
voice: 20005040060 要 スタート。
voice: 20005040070 いろは 『お嬢様、大変申し訳ございませんっ! さっきの居眠りは、どうか見逃してくださいまし!』
voice: 20005040080 美兎 『ベッキー。こ、怖がらなくていいのよ。 ここでは、眠ったってちっとも悪く――』
voice: 20005040090 要 ストップ。 さっき指定した立ち位置と違うわ。
voice: 20005040100 voice: 20005040101 美兎 あっ…… すみません。
voice: 20005040110 要 美兎……。ねえ、 疲れが溜まってるなら、今日は早退しとく?
voice: 20005040120 マチコ ……いったいどうした?
voice: 20005040130 要 ボス、いらしてたんですね。
voice: 20005040140 美兎 平気……ですっ。 もう1回、やらせてください……!
voice: 20005040150 マチコ いいや、ダメだね。今日は帰るんだ。
voice: 20005040160 マチコ 私たちが美兎に求めているのは、まさにその役が降りてきたかのような、 圧倒的で、凄まじい演技力だ。
voice: 20005040170 voice: 20005040171 マチコ しかし役に入れないのでは、稽古の意味がない。 明日も休みを与えるから、調子を戻しな。
voice: 20005040180 美兎 ……明日も?
voice: 20005040190 マチコ 明日も、だ。いっときのバランスを崩すことは誰にだってある。 そんな時必要なのは、十分な休息さ。
voice: 20005040200 マチコ 電姫の役者には、自分を大事にしてほしいからね。 さあ、行きな。
voice: 20005040210 voice: 20005040211 美兎 ……わかり、ました。 お先に、失礼します。
voice: 20005040220 いろは ――みとちゃんっ。
voice: 20005040230 美兎 あ、いろはちゃん……。 走ってきて、どうしたの?
voice: 20005040240 いろは あの、渡したいものが……! さっき休み時間に外を歩いてたら、見つけましてっ。
voice: 20005040250 美兎 これ……お菓子?
voice: 20005040260 いろは マカロンですっ。 みとちゃん、好きそうだなぁ……って。
voice: 20005040270 美兎 わあ……いいの?
voice: 20005040280 いろは これ食べて、元気になってくださいっ。
voice: 20005040290 voice: 20005040291 いろは あの……僕……、 何かあったら、いつでも話聞きますから。
voice: 20005040300 voice: 20005040301 美兎 ……ありがとう。 いろはちゃんは、いつも本当に優しいね。
voice: 20005040310 美兎 初めて話した時も、緊張してる美兎のこと、全然気にしないでくれたよね。 あの時は本当に嬉しかったな。
voice: 20005040320 いろは 初めて、って。 高校1年生の時の話ですか?
voice: 20005040330 美兎 そう。……美兎がおじいちゃんたちと暮らしてる話は、 したことあったっけ。
voice: 20005040340 いろは はい、知ってますよ。
voice: 20005040350 voice: 20005040351 美兎 うちのお父さんとお母さん、昔は一緒にいて、ケンカばっかりだったの。 ……ケンカをやめてって声をかけたら、うるさいって怒られて。
voice: 20005040360 voice: 20005040361 美兎 美兎はずっとびくびくして、耳をふさいで隠れてた。 今はもうふたりともいないし大丈夫なんだけど、時々……思うの。
voice: 20005040370 voice: 20005040371 美兎 誰かに話しかけたら、あんな風に怒るんじゃないかって……。 だからいろはちゃんに出会うまで、人と話すの……ちょっと怖かった。
voice: 20005040380 いろは ……そんなことがあったんですね。
voice: 20005040390 美兎 えへへ。昔話しちゃった。
voice: 20005040400 voice: 20005040401 美兎 演じること、楽しい、のに……。 電姫のみんなと仲良くなれて、本当に嬉しいのに……。
voice: 20005040410 voice: 20005040411 美兎 うまく出来ない……。 こんなんじゃ美兎、ダメだね。
voice: 20005040420 いろは そんなことないです! みとちゃんは今、少し調子を崩してるだけですよ。
voice: 20005040430 美兎 だと、いいな……。 周りの人は、どう思うかわからないけど……。
voice: 20005040440 いろは 周りの人?
voice: 20005040450 美兎 な、なんでもない。
voice: 20005040460 美兎 話聞いてくれてありがとう。 美兎、早く調子戻すね。じゃあ……。
voice: 20005040470 いろは ……みとちゃん。
voice: 20005040480 美兎 結局練習、早退しちゃった。
voice: 20005040490 美兎 なんで役に入れなかったんだろ。セーラの舞台映像や本は、 オーディション前にたくさん触れて勉強したのに……。
voice: 20005040500 美兎 (いろはちゃん、優しかったな。お菓子までくれて……)
voice: 20005040510 美兎 (電姫が無くなりそうだったとき、いろはちゃんは泣いて悲しんでた。 もう、いろはちゃんにあんな顔はさせたくない)
voice: 20005040520 美兎 ……がんばらなきゃ。