voice: 20007060010 初魅 暦、ちょっといいか? お前に来客がいるぞ。

voice: 20007060020 私にですか?

voice: 20007060030 voice: 20007060031 いろは お姉ちゃ…… じゃなくて暦さん!

voice: 20007060040 いろはさん……!?

voice: 20007060050 いろは お弁当を届けに来ましたよ。

voice: 20007060060 ええっ……!?

voice: 20007060070 駄目ですわね、私。 せっかく作って貰ったものを忘れるなんて。

voice: 20007060080 いろは 湯島さんが泣いちゃいますよっ。

voice: 20007060090 いろは 今日はオーディションでしょう?  お腹ぺこぺこで、実力が出せなかったら大変ですから!

voice: 20007060100 いろは 連尺野さん、先ほどは姉を呼んでくださってありがとうございましたっ。

voice: 20007060110 初魅 困ってる女の子がいれば助けるのが当然さ。 こちらこそ、楽しいおしゃべりができて息抜きになった。

voice: 20007060120 voice: 20007060121 初魅 暦にこんな可愛い妹がいたなんてな。 いろは、またおいで。

voice: 20007060130 いろは えへへっ。 僕もとっても楽しかったです!

voice: 20007060140 いろはさん、あなたはもう行きなさい。

voice: 20007060150 連尺野さんもオーディションに出るのです。 今日はお忙しいのですから。

voice: 20007060160 いろは は、はいっ。それではまた!

voice: 20007060170 初魅 ………。

voice: 20007060180 妹に声をかけてくださり、助かりましたわ。

voice: 20007060190 初魅 別に礼は要らんよ。 私もいい時間を過ごせた。

voice: 20007060200 何を話していたんです?

voice: 20007060210 voice: 20007060211 初魅 『お姉ちゃんは劇を観に行くのが大好きなんです!』とかな。 他愛もないことさ。そう警戒するな。

voice: 20007060220 別に、警戒なんてしてませんわよ……。

voice: 20007060230 voice: 20007060231 初魅 あの子のこと、大事にしてやれよ。 どれだけお前を慕ってるか、話してて伝わってきた。

voice: 20007060240 余計なお世話です。 言われなくともわかっております。

voice: 20007060250 初魅 それじゃまた、オーディションで。

voice: 20007060260 ……不思議な人。 我が強いけれど、面倒見はいいのですよね。

voice: 20007060270 あんな優しそうな表情、初めて見ましたわ……。

voice: 20007060280 演出家 今からマクベス役のオーディションを始める。 演技範囲は、予告した通り。

voice: 20007060290 演出家 マクベスが欲にくらんでダンカン国王を暗殺し、 呆然自失する中どこからか聞こえた死者の声に戸惑うシーンだ。

voice: 20007060300 演出家 それでは順番に行くぞ。

voice: 20007060310 ……5番、千寿暦。 よろしくお願いします。

voice: 20007060320 演出家 よし。用意はいいな? 始め!

voice: 20007060330 『……どこかで叫ぶような声が聞こえた』

voice: 20007060340 『もう眠れないぞマクベス。お前に安眠はない。お前は眠りを殺したのだ』

voice: 20007060350 『清らかな眠り。もつれた気疲れの糸をほどき、癒すための』

voice: 20007060360 『眠りとは日ごと訪れる命の終わり、戦いの痛みを癒す風呂、  傷ついた心に塗る薬……』

voice: 20007060370 『大自然が与えてくれるとびきりのご馳走、人生における  最も重要な栄養というべき安眠を、お前は失ったのだ……!』

voice: 20007060380 voice: 20007060381 『いつまでもそのように、私を責める声が聞こえてくる。  ああ……私はなんてことを……!』

voice: 20007060390 演出家 ――OK、さすがは暦だな。 一次審査は合格だ、もう行って構わないぞ。

voice: 20007060400 ありがとうございます。

voice: 20007060410 (先生の反応を見るに、役の雰囲気は間違っていなかったようです)

voice: 20007060420 (……次は連尺野さんの番。いったいどんな演技をされるのか、  参考に見ておかなくては)

voice: 20007060430 演出家 6番、連尺野初魅。

voice: 20007060440 演出家 よし、始め!

voice: 20007060450 初魅 ……。

voice: 20007060460 voice: 20007060461 初魅 『くっはは……  あははははっ!』

voice: 20007060470 ……!?

voice: 20007060480 初魅 『どこかで叫ぶような声が聞こえた。  もう眠れないぞマクベス。お前に安眠はない。お前は眠りを殺したのだ!』

voice: 20007060490 初魅 『清らかな眠り。もつれた気疲れの糸をほどき、癒すための』

voice: 20007060500 初魅 『眠りとは日ごと訪れる命の終わり、戦いの痛みを癒す風呂、  傷ついた心に塗る薬……』

voice: 20007060510 初魅 『大自然が与えてくれるとびきりのご馳走、人生における  最も重要な栄養というべき安眠を、お前は失ったのだ……!』

voice: 20007060520 voice: 20007060521 初魅 『いつまでもいつまでも、私を責め立てる声が聞こえる。  はははっ。私はもう戻ることなどできない……!』

voice: 20007060530 なんて気迫……。

voice: 20007060540 でも、このマクベスは……。