voice: 20011030010 ラモーナ 『イギリスの出身なのか?』

voice: 20011030020 『住んでいたことがあるだけで、生まれは違うんです。  ……そろそろ帰るのにタクシーを呼ばせてもらっても?』

voice: 20011030030 ラモーナ 『いや、よければ送らせてくれ』

voice: 20011030040 緋花里 ラモさん、様になってるさ~……。

voice: 20011030050 リリヤ うん。かっこいい。 はまり役って感じ。

voice: 20011030060 劇団員の間でも期待をかけられているようですわね。

voice: 20011030070 ラモーナさんが演じる、ハードボイルド探偵……。 見逃す手はありませんもの……!

voice: 20011030080 リリヤ 暦もそう思うの?

voice: 20011030090 voice: 20011030091 いえ! これは……その、 ただ、劇団員たちの言葉を引用しただけですわ。

voice: 20011030100 リリヤ そう。 ……あ、休憩みたい。

voice: 20011030110 ラモーナ お疲れ様。 どうだった?

voice: 20011030120 緋花里 かっこよかったさー! ハードボイルドって感じ!

voice: 20011030130 ラモーナ はは、ならよかった。

voice: 20011030140 リリヤ 劇団員の間でも噂なんだって。

voice: 20011030150 ラモーナ 噂?

voice: 20011030160 voice: 20011030161 『ラモーナさんのマーロウ、絶対チケット即完売だよ~!』 だと。

voice: 20011030170 ラモーナ なんだ、雪も知ってたのか?

voice: 20011030180 稽古が始まって以来、劇団員の間では持ちきりだ。 嫌でも耳に入る。

voice: 20011030190 voice: 20011030191 ラモーナ そうか……。 なら、一層稽古に励まなくてはならないな。

voice: 20011030200 リリヤ ラモ、嬉しそう。

voice: 20011030210 ラモーナ 期待をかけられて悪い気はしないさ。

voice: 20011030220 緋花里 ラモさんってどうしていっつもそんなにシャキシャキしてるの?

voice: 20011030230 ラモーナ シャキシャキ?

voice: 20011030240 voice: 20011030241 緋花里 ハキハキ! ……あー、テキパキ! みたいな? ……いっつも背筋まっすぐ! みたいな!

voice: 20011030250 ラモーナ ああ、そういうことなら、両親の背を見て育ったからかもしれないな。

voice: 20011030260 リリヤ 両親の?

voice: 20011030270 緋花里 ふたりとも背筋まっすぐだったの?

voice: 20011030280 voice: 20011030281 ラモーナ はは、まあ背筋もまっすぐだったが。 私の両親はふたりとも軍人なんだ。

voice: 20011030290 voice: 20011030291 ラモーナ 規律を重んじ、周囲に気を配り、率いていくこと……。 自分自身こうありたいというもののほとんどは両親から学んだよ。

voice: 20011030300 ……ご両親のこと、尊敬されてますのね。

voice: 20011030310 ラモーナ ああ。 それに、日本文化が好きなことも、もとはと言えば両親の影響なんだ。

voice: 20011030320 本当に、親の背中を見て育ったって感じだな。

voice: 20011030330 voice: 20011030331 ラモーナ 改めて言われると恥ずかしいな。 ……まあでも、そうだと思うよ。敬愛する、大切な家族だ。

voice: 20011030340 ……。

voice: 20011030350 演出家 稽古再開するぞ! 集合!

voice: 20011030360 リリヤ 相変わらず、スパルタ。

voice: 20011030370 ええと、 『ここの人は誰も――』、違う。

voice: 20011030380 『ここの人たちっていうのは、  誰も本当のギムレットの作り方を知らないんですよ』

voice: 20011030390 『ライムとかレモンジュースにジンを混ぜて、少しの砂糖を入れれば  ギムレットができると思ってるが、そうじゃない。本物のギムレットは――』

voice: 20011030400 緋花里 雪、自主練? 夕飯までまだ時間あるもんね。

voice: 20011030410 ん? ああ。 馴染みのない言葉が続く長台詞だからな。

voice: 20011030420 緋花里 この、台詞に出てくる『ギムレット』ってなに?

voice: 20011030430 酒の名前だろ、カクテルってやつだ。 酒とジュースの混ぜ物。

voice: 20011030440 voice: 20011030441 緋花里 カクテル……! 大人の響きさー……! ラモさんとか、リリヤさんとか似合いそう。

voice: 20011030450 ラモーナ はは、ありがたい話だな。

voice: 20011030460 緋花里 ラモさん! お疲れ様! ラモさんは『ギムレット』、知ってる?

voice: 20011030470 ラモーナ まあ、一応は。 度数も高いし、私は飲んだことがないが……。

voice: 20011030480 リリヤ まるで他のは飲んだことがあるみたい。

voice: 20011030490 ラモーナ ドイツにいた頃はビールをよく飲んでいたよ。 ドイツビールはいいぞ、苦みも少ないし、香りも豊かだ。

voice: 20011030500 緋花里 えっ!? ラモさん、お酒飲んでたの!?

voice: 20011030510 ラモーナ ドイツは16歳からビールやワインを飲んでもいいんだ。

voice: 20011030520 ラモーナ 私は、皆とビールで乾杯するのが好きだったから、 ビールばかり飲んでいたが……。

voice: 20011030530 リリヤ みんなと一緒に乾杯してビール飲んでるラモ……。

voice: 20011030540 想像に難くないですわね……。

voice: 20011030550 緋花里 じゃあじゃあ、『ギムレットには早すぎる』っていうのは?

voice: 20011030560 ラモーナ それは、話の中でテリーがマーロウにあてた遺書を書くシーンがあるだろう? ギムレットはふたりの中で思い出の酒なんだ。だから――

voice: 20011030570 ラモーナ 『最後にギムレットを飲んでほしい。そうしたら自分を忘れてくれ』と、 書き残してテリーは消える。

voice: 20011030580 ラモーナ それで、『ギムレットを飲むこと』がふたりのお別れの証って意味になる。

voice: 20011030590 緋花里 でも、まだお別れしたくないから――

voice: 20011030600 ラモーナ 『ギムレットには早すぎる』というわけだ。

voice: 20011030610 voice: 20011030611 緋花里 大人~……!! おしゃれ! すごい!

voice: 20011030620 緋花里 雪は!? 知ってた!?

voice: 20011030630 voice: 20011030631 なっ!?  まっ、まあな! ワタシの台詞なんだから、当然だろ!

voice: 20011030640 まあ、私たちは日本ではまだ未成年なのですから、 そういう意味でも『ギムレットには早すぎ』ますわね。

voice: 20011030650 リリヤ お別れにも早すぎる、とは言わないの?

voice: 20011030660 銀河座、演劇は強い者が生き残る場所です。 馴れ合いで別れを惜しむつもりはありませんわ。

voice: 20011030670 voice: 20011030671 ラモーナ はあ……。 相変わらずつれないな、暦は。