voice: 20011070010 雪 ほら、ティッシュ。
voice: 20011070020 ラモーナ 雪は、出て行ってはくれないんだな。
voice: 20011070030 雪 本当に出て行ってほしいならそうする。
voice: 20011070040 ラモーナ ……。
voice: 20011070050 ラモーナ ……すまない。
voice: 20011070060 雪 謝れなんて言ってない。
voice: 20011070070 ラモーナ ……ありがとう。
voice: 20011070080 voice: 20011070081 雪 安い礼だな。 それで、腹を割って話す覚悟はできたのか?
voice: 20011070090 雪 全員の前で公開発表させてないワタシの優しさに 感謝してほしいぐらいだが。
voice: 20011070100 ラモーナ ふふ。それは、……本当に感謝しているよ。 助かった。得意じゃないんだ、皆から心配されるのは。
voice: 20011070110 雪 だろうな。 お前はそういうところ、暦サンによく似てる。
voice: 20011070120 ラモーナ ほめ言葉として受け取っておこう。
voice: 20011070130 voice: 20011070131 雪 ワタシのほめ言葉は高いぞ。 それで、その紙はなんなんだ。
voice: 20011070140 ラモーナ 本当に、大したものじゃないんだ。
voice: 20011070150 雪 さっきのが、大したものじゃない人間の態度か?
voice: 20011070160 ラモーナ それは……ただ、今の状況に刺さってしまって。
voice: 20011070170 ラモーナ ……あの紙自体には『甘えたい気持ち』って書いてあるだけだ。
voice: 20011070180 雪 『甘えたい気持ち』?
voice: 20011070190 ラモーナ ドイツにいた頃、ひどく甘え下手な後輩がいてな。 劇団の中でも年少なのに、無理と背伸びばかりしていた。
voice: 20011070200 ラモーナ いくら手を差し伸べても『どう甘えたらいいかわからない』なんて言うから、 『それなら私の甘えたい気持ちを貸してやる』って言ったんだ。
voice: 20011070210 ラモーナ 空箱に『借りていたものを返す』という手紙で、もしやとは思った。 ただ、貸すとは言ったが、返してもらうつもりなんてなかったから。
voice: 20011070220 ラモーナ 今改めて答え合わせをされて、つい。
voice: 20011070230 ラモーナ ……ドイツにいた頃の私は、立派な両親のようになりたくて、 皆に手を差し伸べる『強いラモーナ』になりたくて必死だった。
voice: 20011070240 ラモーナ だからむしろ、なくしてしまいたかったんだ。
voice: 20011070250 ラモーナ 甘えたい気持ちとか、強くなれない自分とか。
voice: 20011070260 ラモーナ ……強い自分になりたかった。 強い人だって、思われている自分を崩したくなかった。
voice: 20011070270 雪 ……今は?
voice: 20011070280 ラモーナ さあ、どうだろうな。
voice: 20011070290 雪 この期に及んで逃げるのか?
voice: 20011070300 ラモーナ ふふ、雪は手厳しいな。
voice: 20011070310 ラモーナ ……人は、そんなすぐには変われないさ。
voice: 20011070320 雪 ……。
voice: 20011070330 雪 で?
voice: 20011070340 ラモーナ でって……。それだけだ。 あまり面白い話ではなかったな、すまない。
voice: 20011070350 雪 だから、謝れなんて言ってない。 で、今はどうなんだって聞いてる。甘えたいのか、甘えたくないのか。
voice: 20011070360 ラモーナ どうもこうも……。
voice: 20011070370 雪 お前が甘えても、誰も笑ったりしない。
voice: 20011070380 ラモーナ ……。
voice: 20011070390 ラモーナ いや、……私の中の私が笑うよ。
voice: 20011070400 雪 そんなつまらないプライドは捨てろ。 スペースが無駄だ。
voice: 20011070410 ラモーナ はは、さすが雪だな。
voice: 20011070420 雪 お前に、甘えてほしいと思ってるやつだって沢山いる。
voice: 20011070430 ラモーナ 強い私を求めているやつだって、沢山いる。
voice: 20011070440 雪 強情だな! ワタシは甘えてほしいって言ってるんだ!
voice: 20011070450 ラモーナ 雪に甘えるのは有料だろ?
voice: 20011070460 雪 それなら貸しにしてやる!
voice: 20011070470 ラモーナ ふふ、雪にしては大サービスだな。
voice: 20011070480 雪 ……お前が、ワタシたちをそう変えたんだ。
voice: 20011070490 ラモーナ ……。
voice: 20011070500 雪 だから、お前だって少しくらい変わってもいい。
voice: 20011070510 ラモーナ …………。
voice: 20011070520 ラモーナ ちょっと、……すまない、時間をくれないか。 泣いてしまいそうなんだ。
voice: 20011070530 雪 本当にお前は甘えるのが下手だな。 今日のワタシがやさしいことに感謝しろ。
voice: 20011070540 ラモーナ ありがとう、もう十分雪には甘えさせてもらったよ。
voice: 20011070550 雪 ずいぶんでかい貸しができたからな、 何で返してもらうか、考えておかないとな。フフフ……。
voice: 20011070560 ラモーナ そうだな、貸しついでになんなんだが、 この話は――
voice: 20011070570 雪 内密に、だろ? それは有料、追加料金だ。
voice: 20011070580 ラモーナ それなら、このシュトーレンの端を全部、でどうだ?
voice: 20011070590 voice: 20011070591 雪 安く見られたもんだな。 仕方ない。許してやる。
voice: 20011070600 ラモーナ ありがとう。
voice: 20011070610 雪 さて、そろそろ緋花里のやつがシュトーレンを食べたくて腹を――
voice: 20011070620 緋花里 ラモさん! やっぱり心配だよ、大丈夫!? 雪にお金むしられてない!?
voice: 20011070630 暦 ちょ、ちょっと緋花里さん! いくら雪さんでも泣いてる方にお金なんて……!
voice: 20011070640 雪 だーれーが、カネをむしるって!? 緋花里、お前大人しく外で待ってろって言っただろ!
voice: 20011070650 voice: 20011070651 緋花里 だって、ずっと出てこないから暦さんも私も心配で……! リリヤさんだって、眠くなってきちゃったって言うし……!
voice: 20011070660 ラモーナ っふふ、……はは、あはは!
voice: 20011070670 リリヤ ラモ、平気?
voice: 20011070680 ラモーナ ……ああ、もう大丈夫だ。 心配してくれて……ありがとう。
voice: 20011070690 緋花里 本当に? ひどいことされなかった?
voice: 20011070700 雪 誰がするかっつの。 ほら、食うんだろ、シュトーレン。
voice: 20011070710 voice: 20011070711 緋花里 あっ! うん! ラモさん! リリヤさん! 行こ!
voice: 20011070720 雪 ……暦サンも。ほら。
voice: 20011070730 暦 え、……ええ。