voice: 20014070010 静香 最初はただ、とにかく悔しかった。
voice: 20014070020 静香 どんな役だろうとここなの初舞台に傷がつくのが嫌だった。 私なら、なんとかできるってもどかしい気持ちでいっぱいだった。
voice: 20014070030 静香 それに、ここなに勝ったカトリナに弱気な顔なんてさせたくなかった。 癪だけど、あの綺麗なかぐや姫の顔が歪むのは見たくなかった。
voice: 20014070040 静香 大好きな舞台が歪んでしまうのは耐えられなかった。 だから私はあの時……。
voice: 20014070050 知冴 舞台に上がった。
voice: 20014070060 ぱんだ うちらもビビりましたよねー。 知らない人がいきなり乱入してきて……。
voice: 20014070070 ぱんだ おかげで舞台は止まらず、無事に進んでいったわけですけど。
voice: 20014070080 静香 最初はここなの気持ちが、私を動かしたんだって思ってた。 私はもうひとりのここなだから。
voice: 20014070090 ここな ……。
voice: 20014070100 静香 けどね、違ったんだ。
voice: 20014070110 静香 アラジンの時もここなは八恵ちゃんに夢中で、自分の演技を失ってた。 周りも見えなくて、ただ八恵ちゃんのためだけに演じる人形になって……。
voice: 20014070120 静香 私なら、そんな情けない演技絶対にしないって……少し、ここなを軽蔑した。
voice: 20014070130 ここな え……?
voice: 20014070140 静香 だってそうでしょ? ワールドダイスターになりたいって人が、 ただひとりのために演じるなんて……。
voice: 20014070150 静香 私は違うと思う。
voice: 20014070160 ここな ごめん……。
voice: 20014070170 静香 ううん。もう過ぎたことだから。
voice: 20014070180 静香 でも、その時から感じてた。 心のどこかに、ここなとは違う『私』がいるってことに。
voice: 20014070190 知冴 ここなとは違う『私』……?
voice: 20014070200 静香 そう。ここなと一緒に過ごして、ここながシリウスに合格して…… 舞台を学んで。どんどん、好きになって……。
voice: 20014070210 静香 私も舞台に立ちたいって。もっとうまくやれる。私なら……って。
voice: 20014070220 ぱんだ ここちゃんのもう一つの人格だったおシズちゃんに、 役者としての自我が芽生えた……多分、そういうことですよね?
voice: 20014070230 静香 ……うん。ぱんだ風に言えば、そういうことかも。 私もひとりの役者として舞台に立ちたくてしょうがなかった。
voice: 20014070240 静香 それが『竹取物語』の時からずっと、静かに抱き続けた私の夢。 ファントムであろうとした私が求めちゃいけない願い。
voice: 20014070250 静香 だから返そうと思ったんだ。このままじゃここなに必要な自信も勇気も、 私が全て奪ってしまいそうだったから。