voice: 20016020010 銀河座スタッフ ――そして、公演終了後には、客席でそれぞれプレゼントを配ってもらう。 主演のリリヤが中央前方のブロック、上手前方を王、下手側を千寿――

voice: 20016020020 リリヤ ……。

voice: 20016020030 銀河座スタッフ 大まかな流れは以上だ。 何か質問のある者は?

voice: 20016020040 リリヤ これはサンタクロースとしてやるの?

voice: 20016020050 銀河座スタッフ いや、衣装のままにはなるが、役は忘れてもらって構わない。 ファンサービスも時間内であれば自由にしていい。

voice: 20016020060 リリヤ ……そう。

voice: 20016020070 銀河座スタッフ 他に質問は?

voice: 20016020080 銀河座スタッフ なければ解散。 おつかれさま。

voice: 20016020090 リリヤ ……。

voice: 20016020100 リリヤ ……やっぱり、ひげとか……。

voice: 20016020110 緋花里 リリヤさん? 帰らないの? 打ち合わせ終わりだよ?

voice: 20016020120 リリヤ ん? うん……。

voice: 20016020130 リリヤ ……。

voice: 20016020140 ラモーナ 不満があります、って顔だな。 さっき質問してた件なら、別に役を演じなくていいって話だっただろう?

voice: 20016020150 リリヤ うん。

voice: 20016020160 ラモーナ 納得がいかないか?

voice: 20016020170 リリヤ サンタクロースなら、サンタクロースの方がいい。 そう思わない?

voice: 20016020180 ラモーナ と、言うと?

voice: 20016020190 voice: 20016020191 リリヤ サンタクロースは、サンタクロースじゃない瞬間なんて見せたりしない。 子どもたちも、私よりもサンタクロースからプレゼントがほしいでしょう?

voice: 20016020200 リリヤ だから、……ひげとか、サンタクロース言葉とか、と思って。

voice: 20016020210 緋花里 本当にリスペクトしてるんだ……。

voice: 20016020220 別にどっちだって、子どもは物をもらえば喜ぶものだし、 ずっとアドリブで役をやるより、好きにしゃべった方が楽だ。

voice: 20016020230 ラモーナ 雪は雪で、かなり淡白だな……。

voice: 20016020240 緋花里 私も、リリヤさんからプレゼントもらったら、 子どもたちみんな喜んでくれると思うよ?

voice: 20016020250 voice: 20016020251 私も同意ですわね。 学校でも、皆さん喜んでくださっているのでしょう?

voice: 20016020260 リリヤ 学校に来たのは、サンタクロースだから。 私じゃない。

voice: 20016020270 フィンランドにしてはずいぶん拘るな。 サンタ村でバイトしてたからって、そんなになるものか?

voice: 20016020280 いつもは『この役は立ってるだけでいいから楽』とか言ってるくせに。

voice: 20016020290 まあ、サンタクロースなら、皆さんそれぞれ思い出もあるでしょうし。 いざ自分がやる側になると、というのもあるのではないですか?

voice: 20016020300 ラモーナ 確かに、『サンタクロース』と言われると、 自分の童心が騒ぐような気持ちにはなるな。

voice: 20016020310 voice: 20016020311 緋花里 私も! サンタクロースって聞くと、ウキウキするさ! でも、今回のイベントでそのワクワクを裏切っちゃうかもってこと?

voice: 20016020320 リリヤ そう。 私はサンタクロースじゃないから。

voice: 20016020330 ラモーナ 難儀だな……。 ひとりだけサンタクロース役を貫くってわけにもいかないだろう?

voice: 20016020340 リリヤ それは……そうだけど。

voice: 20016020350 リリヤ ……。

voice: 20016020360 緋花里 ね、ねえねえ!

voice: 20016020370 緋花里 じゃあさ、みんなは、サンタさんのこと何歳まで信じてた? 私はもう、ずーっと信じてた! 大人になるまで!

voice: 20016020380 まるで今が大人みたいに言うな……。

voice: 20016020390 子どもの頃は、妹と一緒に毎年プレゼントをもらっておりました。 ふたりで手紙なんかを書いたこともありましたわね。

voice: 20016020400 ラモーナ 私も、子どもの頃に手紙を書いたりしたな。 日本のとは少し違う文化かもしれないが、プレゼントももらってた。

voice: 20016020410 リリヤ 信じるも信じないもない。一緒に働いていたし、 子どもの頃から毎年玄関から招いて、お茶をしてた。

voice: 20016020420 緋花里 えぇ!? 本当に来てお話してくれるの!? いいなあ! 私もサンタさんとお茶したいさー!

voice: 20016020430 緋花里 雪は? 兄弟いっぱいいるから、プレゼントもいーっぱいになってた? みんなで手紙書いたりした? クリスマスパーティーとか!

voice: 20016020440 ワタシは、別に。

voice: 20016020450 リリヤ 別に、って?

voice: 20016020460 サンタクロースが来たことなんてない。 だから、別に思い出なんてない。

voice: 20016020470 緋花里 えっ……! ごめん、私……。

voice: 20016020480 いい。気にするな。

voice: 20016020490 緋花里 ……。

voice: 20016020500 ジメジメするようなことじゃない。 そういうことをしない家だったし、できる家でもなかった、それだけだ。

voice: 20016020510 緋花里 でも……。

voice: 20016020520 豪勢な料理だとか、みんなにプレゼントとかもなかったが、 それで誰かを憎んでいるわけじゃない。今さら羨ましいとも思わない。

voice: 20016020530 ラモーナ ……。

voice: 20016020540 ああ、もう面倒くさいな、お前たちは! ワタシたちは、みんな違う場所で育ったんだ。多少の違いなんか当然だろ。

voice: 20016020550 ワタシが経験したことないことをお前たちは経験してる。 そんなの逆だってそうだ。冬の過ごし方一つがなんだ。

voice: 20016020560 voice: 20016020561 それに、ワタシは『雪』という名前が綺麗で気に入っているんだ。 ……冬は、凍えて家事ができないのは難点だが。

voice: 20016020570 だから、いいだろ、別に。 お前たちはそう育った。ワタシはこう育った。以上、終わり。

voice: 20016020580 ……ずいぶん、平然としていらっしゃいますのね。

voice: 20016020590 こんなことでいちいちウジウジしていたら、 こんなところで生きてなんかいけないからな。

voice: 20016020600 リリヤ ……。