voice: 20022010010 『それ』が訪れたのは、中学生の頃だった。
voice: 20022010020 まだ私が青森にいた頃、両親とともに暮らしていた頃。 ある晩、『それ』は、私に語り掛けた。
voice: 20022010030 『お前が舞台に立てば、ダイスターになれる。 この命をかけてもいい』
voice: 20022010040 暗中模索していた私にとって、それは願ってもない、 まさに『神の一手』に違いなかった。
voice: 20022010050 だから、私は答えた。
voice: 20022010060 神よ、必ず、必ず私はダイスターになる。 だから、必ず待っていてほしい。
voice: 20022010070 その誓いこそが、今日までの私の原動力だった。
voice: 20022010080 蕾 ――はっ!!
voice: 20022010090 蕾 ……懐かしい夢だ……。 もう、……何年になるだろうな。
voice: 20022010100 蕾 ……。
voice: 20022010110 蕾 舞台の神よ、私は必ずやダイスターになる。 その誓いを、ひと時たりとも忘れたことは……。
voice: 20022010120 蕾 そう。そうだ。私はそのためにここにいる。 ……現を抜かしている場合などでは、ない。
voice: 20022010130 教師 ほら、席について~。 この前言った通り、今週末は模試ね。
voice: 20022010140 学生 えー、やだー。
voice: 20022010150 教師 今回の模試は、 進路にも関わる重要な試験だから、気合入れて臨むように。
voice: 20022010160 蕾 模擬試験……。
voice: 20022010170 教師 結果が悪かったら、進路のこととか含めて、 親御さん呼んで面談とかもありえるからね~。
voice: 20022010180 蕾 親を呼んで面談……。
voice: 20022010190 蕾 ……わざわざ青森から東京までなんてことはないだろうが、 心配をかけるわけにはいかないな。
voice: 20022010200 蕾 よし、頑張ろう。
voice: 20022010210 いろは 今日は次の舞台について話す、って要さん言ってましたけど、 次の演目は何になるんでしょうね?
voice: 20022010220 美兎 この前の『不思議の国のアリス』、叶羽ちゃんのおかげで すごく人気だったし、次は続編の『鏡の国のアリス』とか……?
voice: 20022010230 叶羽 えー、アタシもう1回がんばったんだから、 2連続は無理~。やだー、パース。
voice: 20022010240 カミラ あはは、でも、もう叶羽以外のアリスなんか考えられんし、 そうなったら腹決めてやるっきゃないって。
voice: 20022010250 叶羽 いーやーだー。 その時はアンタたちでオーディションして誰かアリスやりなさいよ~。
voice: 20022010260 美兎 お、オーディションなんて緊張しちゃうよ……! それも、叶羽ちゃんの代わりなんて……!
voice: 20022010270 いろは 電姫のアリスは叶羽ちゃんなんだから、 アリスはずっと叶羽ちゃんのままがいいです……。
voice: 20022010280 カミラ じゃあ、オーディションには叶羽も強制参加ってことで。
voice: 20022010290 叶羽 えー。それじゃ意味ないってー。
voice: 20022010300 蕾 ……。
voice: 20022010310 要 お待たせ。はーい、みんな、静かに。 ソワソワするのもわかるけど、静かにー。
voice: 20022010320 要 もうわかってると思うけど、 今日集まってもらったのは、次の舞台の話をするためよ。
voice: 20022010330 マチコ 知っての通り、つい先日まで上演していた『不思議の国のアリス』を通じて、 電姫の評判はうなぎ登りだ。皆、ご苦労だった。
voice: 20022010340 マチコ 演劇関係者や評論家の間でも、『アリス』は高く評価されており、 ファンたちの反応はお前たちの知る通り。
voice: 20022010350 voice: 20022010351 マチコ 評論家も、ファンも、演劇関係者も私たちに注目している今、 当然次の公演には高い期待がかけられる。この意味が解るか?
voice: 20022010360 いろは ……!
voice: 20022010370 美兎 そ、それって……。
voice: 20022010380 カミラ 次もすっごい公演しないとマズいってこと……?
voice: 20022010390 叶羽 うへぇ~……。
voice: 20022010400 要 こらこら、電姫を売り出すチャンスなんだから、マイナスにとらえない! 楽しんでこその電姫、でしょ!
voice: 20022010410 いろは そうですよっ! 皆さんに観てもらえる大チャンスですっ! 乗りましょうっ! このビッグなウェーブに!!
voice: 20022010420 蕾 (売り出す、チャンス……)
voice: 20022010430 叶羽 で、次の演目って?
voice: 20022010440 マチコ ああ。要、説明してやれ。
voice: 20022010450 voice: 20022010451 要 はい。 単刀直入に言うけど、次の演目は『ファウスト』よ。
voice: 20022010460 カミラ 『ファウスト』?
voice: 20022010470 叶羽 ゲーテとか、めっちゃ古典演劇じゃん。 電姫っぽくなくない?
voice: 20022010480 カミラ そうなん?
voice: 20022010490 voice: 20022010491 要 そのままやれば、ね。 そこは、当然電姫らしいアレンジをするから安心して。
voice: 20022010500 要 ただ、今回集まってもらったのは『ファウスト』をやるから、じゃない。
voice: 20022010510 美兎 えっ……?
voice: 20022010520 要 ボスが言った通り、次の舞台には大きな期待がかけられる。 だから、その主演は確実な実力とやる気がある人に頼みたい。
voice: 20022010530 カミラ と、いうことは……。
voice: 20022010540 マチコ 主演のファウスト役は、オーディションで決める。
voice: 20022010550 叶羽 は?
voice: 20022010560 叶羽 はぁあ~~~~~っ!?!?
voice: 20022010570 叶羽 で、電姫ってそういうんじゃないじゃん! ゆるく楽しんでやりましょ~ってのが電姫でしょ!? ねぇ、要!
voice: 20022010580 要 『ゆるく』は余計。それに、『小公女』の時もオーディションだったでしょ。 もちろん、全員強制参加ってわけじゃないわ。
voice: 20022010590 要 この主演をやってみたいって人に頼みたいから、オーディションをする。 今すぐ決めなくてもいいから、少し考えて――
voice: 20022010600 いろは はいっ!
voice: 20022010610 美兎 い、いろはちゃん!?
voice: 20022010620 いろは オーディション、出たいです!
voice: 20022010630 美兎 えっ、えぇ~っ!?
voice: 20022010640 voice: 20022010641 いろは 絶対、いい舞台にしますっ! みとちゃんも、主役、チャレンジしてみませんか?
voice: 20022010650 美兎 み、美兎は……。ええと……。
voice: 20022010660 voice: 20022010661 叶羽 アタシ、パース。 『アリス』でがんばったのでおやすみをいただきまーす。
voice: 20022010670 カミラ う、ウチもちょっと、さすがにこのタイミングの主役は まだ荷が重いかな~、的な……。
voice: 20022010680 美兎 美兎は……。
voice: 20022010690 美兎 (いろはちゃんと、電姫のみんなと役を取り合うなんて…… しかも、こんなに注目される舞台で……)
voice: 20022010700 美兎 ご、ごめんね、いろはちゃん……。 いろはちゃんのファウスト、楽しみにしてるね……。
voice: 20022010710 要 こらこら、まだいろはに決まったわけじゃないんだから。 他にオーディションに出たいって人は?
voice: 20022010720 蕾 ……。
voice: 20022010730 要 もちろん、後から名乗り出るんでもかまわないから――
voice: 20022010740 蕾 はいっ!
voice: 20022010750 カミラ 先輩!?
voice: 20022010760 蕾 私も、オーディションを受けたいです。
voice: 20022010770 voice: 20022010771 要 ええ、わかった。 他に、この場で名乗り出る人はいる?
voice: 20022010780 voice: 20022010781 要 ……いなそうね。 じゃあ、今日は解散。オーディションについてはまた後で連絡するから。