voice: 20024070010 八恵 あの、……工藤さんも、以前は舞台に立たれてたんですよね?
voice: 20024070020 花 ん? そうね。私も前はシリウスの役者だったわよ。 どうしたの、急に。
voice: 20024070030 八恵 ……工藤さんは、どうして舞台から降りてしまったんですか?
voice: 20024070040 花 んー……。
voice: 20024070050 八恵 ……。
voice: 20024070060 花 私の場合、『降りてしまった』っていうのもちょっと違うかも。
voice: 20024070070 八恵 違う……?
voice: 20024070080 花 まあ、1個わかりやすい理由は、23歳になったから。
voice: 20024070090 八恵 23歳……。
voice: 20024070100 花 所属する役者は23歳以下、っていうのがシリウスのルールだからね。
voice: 20024070110 花 23歳になった私は、他の劇団に移籍をするか、 裏方になってシリウスに残るかの選択を迫られた。
voice: 20024070120 花 それで、私は『裏方になってシリウスに残る』を選んだ。 まあ、正確に言うと、一旦辞めて演出の勉強をして戻ってきてるんだけど。
voice: 20024070130 八恵 ……どうしてですか? シリウスに入れたくらいなら、他の劇団にもスカウトとか――
voice: 20024070140 花 ふふ、さすがダイスターは貪欲ね。 どうしてだとおもう?
voice: 20024070150 八恵 ……ええと……。
voice: 20024070160 花 私がシリウスの裏方になることを選んだ理由はね、 『シリウスが好きだから』。
voice: 20024070170 八恵 シリウスが好きだから……。
voice: 20024070180 花 もちろん、他の劇団に行くって道もあったけど、 その当時、シリウスは柊たちがちょうど活躍してたころでね。
voice: 20024070190 花 別劇団に行って、この子たちと競い合うよりも、 この子たちがより輝く舞台を作りたいって思った。
voice: 20024070200 花 脚本とか演出にも、もともと興味があったしね。 自分が立つよりも、みんなをよりよく見せたいって思いの方が強かった。
voice: 20024070210 花 シリウスのみんなが好きだから、 シリウスの作る舞台が大好きだから、私はシリウスの演出家になることを選んだ。
voice: 20024070220 花 これで、八恵が聞きたい答えになってそう?
voice: 20024070230 八恵 ……。
voice: 20024070240 八恵 ……工藤さんは、また舞台に立ちたいって思いますか?
voice: 20024070250 花 また立つのも悪くないかなって思う日もある。
voice: 20024070260 八恵 ……!
voice: 20024070270 voice: 20024070271 花 でも、私は今が楽しいかな。 あなたたちが演じている舞台を作り上げるのって、結構やりがいあるのよ?
voice: 20024070280 八恵 で、でも――
voice: 20024070290 花 ねえ、八恵。
voice: 20024070300 八恵 ……はい。
voice: 20024070310 花 残念だけど、柊の考えはね、柊にしかわからない。
voice: 20024070320 八恵 ……。
voice: 20024070330 花 柊に戻ってきてほしい、って思ってるのは貴女だけじゃないけどね。
voice: 20024070340 八恵 ……柊さんの舞台を初めて観たとき、衝撃を受けました。
voice: 20024070350 八恵 なんて素敵な演技なんだろう、って胸がワクワクして。 本当に、夢を見ているみたいだったんです。
voice: 20024070360 八恵 観客のみんなが、柊さんの演じている『王子さま』の物語に夢中になって。 王子さまとずっと一緒に旅をしてきたような心地で。
voice: 20024070370 八恵 柊さんみたいな演技がしたい。 私もあの素敵な舞台に立ってみたい、って思いました。
voice: 20024070380 花 役者名利に尽きる話ね。
voice: 20024070390 花 でも、柊みたいな演技がしたいっていうなら、 柊の演技指導を受けているだけで十分なんじゃない?
voice: 20024070400 八恵 それは……。
voice: 20024070410 八恵 ……柊さんと一緒の舞台に立ちたいっていう、 ただの私のわがままなんです。
voice: 20024070420 八恵 舞台の上で柊さんと、また、……いいえ。 これまでよりもずっと素晴らしい舞台を作り上げてみたい。
voice: 20024070430 花 あはは、愛されてるわね、あの子。
voice: 20024070440 八恵 ……柊さんのことが、大好きですから。
voice: 20024070450 voice: 20024070451 花 ねえ、素晴らしい舞台を作るって柊じゃなきゃダメなの? ほら、ウチの役者って結構粒ぞろいじゃない。
voice: 20024070460 八恵 ……。
voice: 20024070470 voice: 20024070471 八恵 確かに、シリウスの皆さんは素晴らしい役者さんたちです。 でも……。
voice: 20024070480 voice: 20024070481 花 ……そうよね、やっぱり。 ごめんね、意地悪しちゃった。
voice: 20024070490 花 柊はひとりしかいないんだから、 そりゃ、柊じゃなきゃダメよね。
voice: 20024070500 八恵 はい。
voice: 20024070510 花 じゃあ、柊を口説き落とせるくらい私たちも頑張らなきゃね。
voice: 20024070520 八恵 ふふ、ありがとうございます。 頑張ります。