voice: 20028010010 演出家 では、今日の稽古はここまで。

voice: 20028010020 銀河座スタッフ 先日伝えた通り、明日からの連休はメンテナンスのため 稽古場に入れなくなる。当然、自主練にも使えないので注意するように。

voice: 20028010030 銀河座スタッフ 週明けからは次回公演『白蛇伝』の稽古が本格的に入ってくる。 おそらく本番までに最後の連休だ。各々十分な休養を取ってくれ。

voice: 20028010040 一同 はい!

voice: 20028010050 あの、ラモーナさん。 今、少しよろしくて?

voice: 20028010060 voice: 20028010061 ラモーナ ん? ああ。もちろん。 どうした、暦からなんて珍しいじゃないか。

voice: 20028010070 ええ、本読みにお付き合いいただきたくて。

voice: 20028010080 ラモーナ ……えっ?

voice: 20028010090 なんですの……そんな、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をなさって……。

voice: 20028010100 ラモーナ も、もう一度言ってくれないか?

voice: 20028010110 えっ? ですから、鳩が豆鉄砲を――

voice: 20028010120 ラモーナ ちがう、その1個前だ。

voice: 20028010130 ええと、本読みにお付き合いいただきたい、と。

voice: 20028010140 ラモーナ 暦が……私を、本読みに……!? 夢じゃないよな……?

voice: 20028010150 ラモーナ もちろん付き合うとも!  三日三晩、暦が満足するまでいくつの夜でも超えてみせる!

voice: 20028010160 そんなにやるわけがないでしょう……。

voice: 20028010170 では、この後少し休憩してから、でいかがでしょうか?

voice: 20028010180 voice: 20028010181 ラモーナ もちろん!  あっ、いや、待ってくれ!! どうしても、今日か……?

voice: 20028010190 なんですの、先ほどから騒々しい……。 このままやってしまった方が、手間が省けるかと思っただけですわ。

voice: 20028010200 ラモーナ その……実は、この後あまり時間がなくて。 せっかくの暦の誘いなんだ、短い時間で終わってしまうなんてもったいない。

voice: 20028010210 voice: 20028010211 あら。でも、お忙しいのでしたら仕方がないですわね。 本読みはまた今度――

voice: 20028010220 voice: 20028010221 ラモーナ 待ってくれ、暦。 明日、明日はどうだ? 丁度稽古もないし、予定も空いているんだ。

voice: 20028010230 ええまあ、明日でも、構いませんけれど……。

voice: 20028010240 voice: 20028010241 ラモーナ よし、では明日にしよう。 場所は稽古場を借りれば――

voice: 20028010250 ラモーナ いや、稽古場はメンテナンスがあるんだったな……。

voice: 20028010260 であれば――

voice: 20028010270 voice: 20028010271 ラモーナ 頼む、暦! 私にチャンスをくれ。 このラモーナ・ウォルフ、掴んだチャンスは絶対に逃したくない。

voice: 20028010280 なにを大げさに……。 ただの本読みなのですから、そんな必死にならなくてもよろしいのでは?

voice: 20028010290 ラモーナ 暦が誘ってくれたのだから、私には『ただの本読み』じゃない。 それに、私も暦と合わせておきたかったんだ。

voice: 20028010300 ラモーナ お互いにやりたいと思っていることなんだ、 よい舞台を作るために必要なステップ、ということだろう?

voice: 20028010310 ……。

voice: 20028010320 ラモーナ とはいっても、場所がないのではな……。

voice: 20028010330 ……あの。

voice: 20028010340 ラモーナ 待ってくれ、絶対になんとかしてみせるから。 寮の共有スペース、いやしかし、人の出入りも多いしな……。

voice: 20028010350 あの、ラモーナさん。 その……私の家に……稽古場がありますの。

voice: 20028010360 ラモーナ ……? そうなのか、さすが演劇の名家、千寿家だな……?

voice: 20028010370 voice: 20028010371 そうではなくて! ……その、ですから、場所がないなら私の家で本読みでも、と……。

voice: 20028010380 じ、自宅であれば、周囲の迷惑や、時間も気にせずできますし。 一晩中練習をしても、誰にも文句は言われませんから。

voice: 20028010390 ラモーナ ……。

voice: 20028010400 ラモーナ ほ、本当か!? 暦!

voice: 20028010410 あっ、あまり大きな声を出さないでくださいまし!

voice: 20028010420 ラモーナ だ、だって、暦の自宅に、私が!? 日本人は自宅に人を招かないと聞いていたが、いいのか……!?

voice: 20028010430 仕方がないでしょう! 稽古場が空いていないのですから!

voice: 20028010440 とにかく、家の者には来客がある、と伝えておきますから。 明日の昼過ぎにでも――

voice: 20028010450 リリヤ ふたりで、抜け駆け?

voice: 20028010460 ラモーナ いや、ちがうんだリリヤ! これには理由が――

voice: 20028010470 緋花里 なになに? 楽しい話? 暦さんの家で遊ぶって聞こえたけど!

voice: 20028010480 ああもう……。 遊ぶのではなく、稽古の話をしていたんです。

voice: 20028010490 リリヤ 暦の家で、ふたりで一晩中稽古?

voice: 20028010500 voice: 20028010501 緋花里 えっ、それって合宿ってこと!? いいねえ! みんなでカレー作って、夜にはキャンプファイヤーだね!

voice: 20028010510 voice: 20028010511 そんな校外学習じゃあるまいし……。 ただ、私の家で本読みをという話をしていただけですから。

voice: 20028010520 ラモーナ たしかに合宿もいいな! 布団に入って夜通しやる『コイバナ』というものがあるんだろう?

voice: 20028010530 緋花里 やっさやっさ! 夜には枕投げも欠かせないさ!

voice: 20028010540 リリヤ 暦と一緒にお風呂……楽しみ。

voice: 20028010550 ……勝手に話が進んで、 泊まるつもりすらあるみたいだが、大丈夫なのか?

voice: 20028010560 ……家の者には話しておきます。

voice: 20028010570 そうじゃなくて、例の。

voice: 20028010580 薬の件であれば、うまく隠します。 私から提案したことですから、いまさら無碍にもできないでしょう。

voice: 20028010590 voice: 20028010591 そうか。 くく、暦サンもずいぶんお人好しになったな。

voice: 20028010600 はぁ……そんなつもりはないのですけれどね。