voice: 20029010010 容 輝く星に憧れていた。
voice: 20029010020 容 身を焦がされるような舞台の世界。 ダイスターという存在の熱に触れて……自分もそうなりたいと願った。
voice: 20029010030 容 だから自分も役者になることを選んで―― ……アタシは。
voice: 20029010040 容 ……ふーっ……。
voice: 20029010050 容 大丈夫……大丈夫……。
voice: 20029010060 容 アタシは……できる。
voice: 20029010070 初魅 容、そろそろリハーサルを始める。 準備しておけ。
voice: 20029010080 容 あ……うん。
voice: 20029010090 容 Edenが挑む新しい舞台『サロメ』。
voice: 20029010100 容 それは王女サロメの狂気的な愛と、高潔な預言者ヨカナーンに焦点を当てた、 絢爛かつ退廃的な劇だった。
voice: 20029010110 容 主演のサロメを務めるのは萬容。普段は脇役に徹する役者が、 今回は主演を務めるとにわかに注目を集めた。
voice: 20029010120 容 準主演のヨカナーンには、持ち前の素直さで役に溶け込む才を発揮する、 新人の舎人仁花子が選ばれた。
voice: 20029010130 容 バイプレイヤーと新人をメインに据え行われる耽美な劇は、 まさに挑戦作と言えるのかもしれない。
voice: 20029010140 容 ――時は、その本番を間近に控えていた。
voice: 20029010150 voice: 20029010151 容 『今宵の月の輝きは、磨かれた銀の剣のように冴え渡っている。 ……なんて美しい。汚れを知らない無垢な光』
voice: 20029010160 容 『もうたくさんよ。 あんなところにいたくないわ』
voice: 20029010170 容 『なぜヘロデ王は私をあんな目で見るのかしら。 身体中を蛇が這うようなあの感覚……本当に嫌になる……』
voice: 20029010180 容 『ああ……。月を見ていると心が癒えていく。 淡い光で、このひどく嫌な想いも洗い流してくれたらいいのに』
voice: 20029010190 容 (王女サロメは、踊ることが好きな年頃の少女。 その可憐さと度々披露される美しい踊りは、城の衛兵たちを魅了する)
voice: 20029010200 しぐれ 『……』
voice: 20029010210 劇団員 『見ろ、今宵もサロメ様が踊られている。 美しいな』
voice: 20029010220 しぐれ 『しかし今日はどこか物憂げだ。 月の下にいるせいかそう見える』
voice: 20029010230 劇団員 『可哀想に。先王が亡くなられてすぐ、へロディア王妃は再婚なされた。 しかも相手はヘロデ王ときた』
voice: 20029010240 劇団員 『父を殺した憎むべき叔父が義父となったのだ、 心労も相当なものだろうよ』
voice: 20029010250 しぐれ 『しっ。あまり大きな声でそれを話してはいけない』
voice: 20029010260 容 (腐敗した王室、堕落した母、自分に色情を向ける義父。 サロメは自分を取り巻く全てから逃げ出し、忘れたかった)
voice: 20029010270 容 (城を抜け出し、ひとりで大好きな踊りに没頭する時間。 それが唯一の気晴らし)
voice: 20029010280 容 (……そんな時、彼に出会ったんだ)
voice: 20029010290 仁花子 『――ああ、なんということだ。 許されぬ。許されぬ……!』
voice: 20029010300 容 『この声はいったい……? 誰なの?』
voice: 20029010310 仁花子 『欲望のまま振る舞い、罪を注ぐ盃があふれたあの男はどこに? 夫を捨て、あろうことかその弟と結婚した愚かな女はどこへ?』
voice: 20029010320 容 『これは……』
voice: 20029010330 しぐれ 『いけません王女様。その者の言葉に耳を貸しては』
voice: 20029010340 容 『衛兵さん、彼はいったい誰に怒っているの? あれはお義父さまとお母さまのこと……?』
voice: 20029010350 仁花子 『なんとおぞましい王家だ。悔い改めよ。 罪を裁かれるべきだ!』
voice: 20029010360 初魅 ……。
voice: 20029010370 テトラ 演技がどんどん上達していく……恐ろしいくらいだよ。 吸収が早いんだろうね。
voice: 20029010380 テトラ 純粋すぎるがゆえの危うさをあの子は表現できている。 あれはあの子にしかできない演技だ。
voice: 20029010390 初魅 ああ、私の目に狂いはなかった。 期待に応えてくれているな。
voice: 20029010400 初魅 ……ヨカナーンは。