voice: 20029040010 スタッフ 『サロメ』当日券終了でーす。 ご予約の方はこちらで受付お願いしまーす。
voice: 20029040020 観客A 初日のチケット取れてよかったー。 どんな劇なんだろう。
voice: 20029040030 観客B 今回、配役も珍しい感じだよね。 普段脇を固めてる人が主演だし、新人さんが準主演でさ。
voice: 20029040040 観客A ほんとにね。 情報公開されたとき、SNSで話題になってた。
voice: 20029040050 観客B 今回も楽しみだなぁ。
voice: 20029040060 テトラ 客の入りは上々だね。 当日券も完売だ。
voice: 20029040070 初魅 ああ。 良い舞台にしよう。
voice: 20029040080 容 ……。
voice: 20029040090 テトラ 容。
voice: 20029040100 容 ……ん?
voice: 20029040110 テトラ こっちおいで。
voice: 20029040120 容 何?
voice: 20029040130 テトラ 手貸してごらん。
voice: 20029040140 voice: 20029040141 容 はい―― って……いてててててっ!?
voice: 20029040150 テトラ あははは。 緊張しなくなるツボだよ。
voice: 20029040160 容 急にめいっぱい押さないでくださいよ!? びっくりしたぁ……。
voice: 20029040170 テトラ 緊張してるみたいだったからねぇ。 さっきなんて、眉間にこーんなシワが寄ってたよ?
voice: 20029040180 テトラ ……配役発表の時はあんなに嬉しそうだったじゃないか。 気負わず、肩の力抜きな。
voice: 20029040190 voice: 20029040191 容 あ……、 そうですね……ありがとうございます。
voice: 20029040200 テトラ 終わったら、何か好きなものでも食べに行こう。 あんたが主演の舞台は久々だしね。
voice: 20029040210 voice: 20029040211 容 ……テトラさん。 ……アタシ、がんばります。
voice: 20029040220 voice: 20029040221 容 ……でも。 でも、もし……。
voice: 20029040230 テトラ 容。 それは一番、言っちゃいけないことだ。
voice: 20029040240 容 ……!
voice: 20029040250 テトラ 大丈夫だよ。
voice: 20029040260 テトラ あんたはよくやってる。あたしだってそれを知ってるし、 きっとこの舞台も良いものになる。
voice: 20029040270 テトラ あたしはあんたを信じてる。 だからあんたも、自分のことを信じてやんな。
voice: 20029040280 容 ……はい。
voice: 20029040290 仁花子 幕……上がりますね。 緊張する~。
voice: 20029040300 容 いよいよだ……。
voice: 20029040310 初魅 容、がんばれ。 約束を忘れるなよ。
voice: 20029040320 容 ……うん。
voice: 20029040330 仁花子 『王とその妻に伝えよ。 おぞましき罪を認め、悔い改めろと……』
voice: 20029040340 容 『あの預言者……やっぱり怖いわ。 いっとう怖いのはあの両目、まるで深い湖。呑まれてしまいそう』
voice: 20029040350 テトラ よく頑張ってるね、容……。 結局センスを使わずに舞台に立っているのか。
voice: 20029040360 初魅 当然だ、これは容の為に用意した舞台だからな。
voice: 20029040370 初魅 思っていた通り、仁花子の演技は観客の目を引いている。
voice: 20029040380 テトラ ああ。それに、 あんたはもちろんだが、仁花子も大黒もしぐれも、皆仕上がってるよ。
voice: 20029040390 初魅 私は平均点で満足する気はないからな。 容は……。
voice: 20029040400 初魅 ……思っていた通り。演技はやや硬いが、許す。 大事なのは、たとえ一時だろうと観客の魂を揺さぶることができるかだ。
voice: 20029040410 初魅 『サロメはどこだ? なぜ命じたのに宴に戻ってこない?』
voice: 20029040420 大黒 『王よ、あの子のことなどよいではありませんか』
voice: 20029040430 大黒 『憎らしい……。 王はいつもあの子を見てばかりです』
voice: 20029040440 初魅 『そうではないへロディア。ただ私は疲れておるのだ。 美しい娘の姿を見ねば、あの預言者の怨み言に苛まれてしまう』
voice: 20029040450 初魅 『――おや? 噂をすればサロメがいるではないか』
voice: 20029040460 容 ……。
voice: 20029040470 初魅 私は何度だって、賭けたいと思ってる。 お前が成功してくれるまで。
voice: 20029040480 容 ……。
voice: 20029040490 容 ごめん。 アタシ、自分勝手なこと言って……。
voice: 20029040500 容 ……うん。 最後までやってみるよ。
voice: 20029040510 大黒 『あの子を見ないでください、王よ!』
voice: 20029040520 voice: 20029040521 初魅 『ふふ、月を見ているだけさ。今宵の月は美しい。 ……だが様子が変だ。まるで恋をした女のように赤く紅潮して見える』
voice: 20029040530 容 (初魅は最後まで、アタシを信じてた。 あんな風に傷ついた顔をするなんて、思いもしなかった……)
voice: 20029040540 容 (泣いてしまいそうに見えたなんて……気のせいだと思うけど。 なんとしても期待に応えないと)