voice: 20031030010 講師 ふふ、とはいえ完全に即興は難しいですよね。 1分時間を与えますから、演じる人物の設定を固めてください。
voice: 20031030020 カトリナ はい。
voice: 20031030030 カトリナ (普通の女子高生……ね。 アタシ自身普通の女子高生とは言えるけど)
voice: 20031030040 カトリナ (普通って定義は人それぞれだし……。 役者はそもそも、自分ではない別人を演じるもの)
voice: 20031030050 カトリナ (それでいて、なるべく観客を惹き付ける演技? よくわからないオーダーだわ……)
voice: 20031030060 カトリナ (――うまくやろうとしなくて良いとは言われたけど。 アタシはシリウスの役者として見られている。失敗はごめん)
voice: 20031030070 カトリナ (エチュードは最初の状況設定で舞台が決まる。 考えるのよ、アタシにとっての普通で、惹き付ける演技は……)
voice: 20031030080 講師 では始めてください。
voice: 20031030090 カトリナ 『……冷たっ』
voice: 20031030100 voice: 20031030101 カトリナ 『雨……? なんで今に限って……傘も持ってないのに……』
voice: 20031030110 カトリナ 『……。 いや、今だからか……良いタイミングかも』
voice: 20031030120 カトリナ 『はあ……』
voice: 20031030130 静香 (お題は普通の女子高生。でもカトリナの演技はどこか悲しげね。 もっと明るい、ここなみたいな女の子が出てくると思ったけど)
voice: 20031030140 カトリナ 『…………』
voice: 20031030150 静香 (泣いてる?)
voice: 20031030160 カトリナ 『……あの人に振られちゃった。 大好きだったのに』
voice: 20031030170 知冴 なるほど、失恋した女の子か。
voice: 20031030180 カトリナ 『ふふ……こんなに降ってたら、誰もわからないよね。 明日は風邪ひいちゃうかも』
voice: 20031030190 講師 はい、そこまで。 カトリナさんありがとうございました。
voice: 20031030200 カトリナ は、はい……。
voice: 20031030210 講師 恋に破れた、という設定はカトリナさん自ら加えられたものですね。 どうしてこのシチュエーションを?
voice: 20031030220 カトリナ ええと……ひとくちに普通の女の子といっても、普通の定義は様々で、 人生は色んな出来事の積み重ねです。
voice: 20031030230 カトリナ 悲しいことも嬉しいこともある、 そんな日常の中で、あるとき雨が降る。
voice: 20031030240 カトリナ 雨は冷たいけど、時には自分と一緒に泣いてくれているような、 そんな気持ちになることだってある……と思いました。
voice: 20031030250 講師 良い着眼点です。確かに、普通の人生というのは定義が難しい。 カトリナさんは短い時間でとても深く考え演技をしているのがわかりました。
voice: 20031030260 講師 戻って大丈夫ですよ。 では次、流石知冴さんお願いします。
voice: 20031030270 知冴 はい。
voice: 20031030280 静香 お疲れカトリナ。 トップバッターなのに難なく演じてたわね。
voice: 20031030290 カトリナ 当然よ。 まあ、ちょっと慣れなくて恥ずかしかったけど……。
voice: 20031030300 講師 では流石さんは、『仕事に疲れたサラリーマン』の演技をお願いします。 雨に降られているシチュエーションは同じです。
voice: 20031030310 講師 では、始め。
voice: 20031030320 知冴 『……ん』
voice: 20031030330 静香 ――!
voice: 20031030340 知冴 『……』
voice: 20031030350 知冴 『雨……か』
voice: 20031030360 知冴 『ははっ。 ついてない……』
voice: 20031030370 静香 (流石、一瞬で雰囲気が変わった。 いつも以上に体の力が抜けた、アンニュイな演技……)
voice: 20031030380 知冴 『待て。スーツの替えは……。 無かったな。チッ、明日も商談だってのに』
voice: 20031030390 知冴 『ったく、だるい……。 はっ、こんな雨の中でタバコが付くはずないか』
voice: 20031030400 知冴 『あー……』
voice: 20031030410 静香 (なに? 急に口を開け始めた…… あれ……雨を飲んでるの?)
voice: 20031030420 知冴 『うぉっ……!?』
voice: 20031030430 知冴 『やべぇ……間一髪だ。 あぶねぇあぶねぇ、看板が飛ばされてんぞ……』
voice: 20031030440 voice: 20031030441 知冴 『こりゃ明日は休みか……? なんとか家まで帰らねーと……』
voice: 20031030450 講師 はい、そこまで。
voice: 20031030460 講師 身体も上手く使って状況に対応していますね。 強風に耐え進む演技はお見事でした。
voice: 20031030470 知冴 へへ。ありがとうございます。
voice: 20031030480 講師 雨を飲もうとする演技も面白かったですね。
voice: 20031030490 知冴 ああ……あれは、すごく喉が渇いていて、私の演じた世界では、 空から降ってきた雨が、みかんジュース味って設定で……。
voice: 20031030500 カトリナ どういう設定よ……。
voice: 20031030510 静香 発想力が頭ひとつ抜けてるわね……。 でも、サラリーマンのけだるい演技はすごく上手かったわ。
voice: 20031030520 知冴 へへ。映画のヒーローを参考にしたんだ。くたびれた中年主人公が 波乱に巻き込まれるのは、よくあるシチュエーションだから。
voice: 20031030530 カトリナ なるほど……。
voice: 20031030540 静香 確かに、他の作品から得たイメージを蓄積していけば、 いざという時に対応できるもの。引き出しを多く持つことは大事よね。
voice: 20031030550 知冴 映画は寮でも気軽に観れるしね。
voice: 20031030560 カトリナ 私も、舞台以外の作品もっとたくさん観ておかなきゃ……。