voice: 20035040010 テトラ ……うん。 良い香りだ。さぞ丁寧に造られた吟醸なんだろう。

voice: 20035040020 テトラ こうして一緒に飲むのは久しぶりだね。 酒は憂いの玉箒と言うが……。

voice: 20035040030 テトラ 何か一緒に飲みたい理由でもあったのかい? 初魅。

voice: 20035040040 初魅 ……別に。

voice: 20035040050 テトラ おっと、明日も公演だろう。 そのウイスキー……水も足したほうが良いんじゃないか。

voice: 20035040060 初魅 わかってる、明日残るような飲み方はしない。

voice: 20035040070 テトラ あたしが来る前から酔っていたじゃないか。 とても調整しているように見えないよ。

voice: 20035040080 初魅 心配には及ばない。

voice: 20035040090 テトラ ……。

voice: 20035040100 テトラ 今日の評判を聞いたんだ。反応は悪くなかったよ。 新しい主演になった大黒も、観客に受け入れられている。

voice: 20035040110 初魅 ……ああ。

voice: 20035040120 テトラ 急な交代があってからも、みんな頑張っている。 あんたのためにね。

voice: 20035040130 テトラ 満足かい?

voice: 20035040140 初魅 大黒はよくやってくれている。

voice: 20035040150 テトラ そう……。

voice: 20035040160 初魅 ……。

voice: 20035040170 テトラ 今日の舞台は、あんたが思い描いてたものじゃないんだね。

voice: 20035040180 初魅 はっ、急に何を言いだすんだ。 そんなことはない。

voice: 20035040190 テトラ じゃあなぜ、舞台の出来について語らないんだ?

voice: 20035040200 初魅 それは……。

voice: 20035040210 テトラ 容を降板させると聞いた時は驚いたよ。

voice: 20035040220 テトラ あんたを問い詰めたが、容自身もそうしてほしいようだったからね。 ふたりの決断を受け入れた。

voice: 20035040230 テトラ けど、初魅。 あんたはあの日から止まっているように見えるよ。

voice: 20035040240 テトラ まだ前を向けていないんだろう。 舞台の上で容のセンスを封じた、あの日からね。

voice: 20035040250 初魅 ……。

voice: 20035040260 テトラ どうしてそこまで意地を張る?

voice: 20035040270 voice: 20035040271 初魅 ……。 ――っ。

voice: 20035040280 初魅 あいつが私を裏切ったんだ。 私との約束を破って……。

voice: 20035040290 初魅 私は、あいつのことを信じていたのに。

voice: 20035040300 テトラ ……信じていた、ね。

voice: 20035040310 テトラ あんたの才能には期待してる。 だが才能のある奴ってのは、自覚がないから困りもんだ。

voice: 20035040320 テトラ 他人が自分の思い通りになると思ってる。 そして無意識に人を傷つけるんだ。馬鹿と紙一重だよ。

voice: 20035040330 初魅 馬鹿だと?

voice: 20035040340 テトラ 本番中に他人のセンスを封じちまう馬鹿なんて、あんただけだろうよ。 容は驚いただろうね。

voice: 20035040350 初魅 私なら即座に対応してみせた。 あの時センスを封じたのは、容にチャンスを与えたかったからだ。

voice: 20035040360 初魅 だが、それすらあいつは捨てたんだ!

voice: 20035040370 テトラ 捨てただって……? だから馬鹿だってんだよ。 あんたは人の気持ちがまるでわかっちゃいない。

voice: 20035040380 テトラ あの子の弱さは魅力でもある。 あんたみたいな立ち回りは難しいだろう。

voice: 20035040390 voice: 20035040391 テトラ 決心がつかず、それでもどうにかやろうとして。 だが頼みの綱を切られた。

voice: 20035040400 テトラ 舞台の上で足をすくませ……たいそう傷ついただろうね。 そんな容の気持ちを、あんたは考えたことがあるかい?

voice: 20035040410 初魅 ……それは。

voice: 20035040420 テトラ 他のやり方もあったんじゃないか。

voice: 20035040430 初魅 ……。

voice: 20035040440 テトラ 初魅、ここは銀河座じゃないんだよ。 みんなあんたを信じて、精一杯ついていこうとしてる。

voice: 20035040450 テトラ だから……あんたも容のことを、 あの子がまた立てるようになるまで、支えてやりなよ。

voice: 20035040460 初魅 ……支えるなんて。

voice: 20035040470 テトラ 信頼ってのは相互関係だ。

voice: 20035040480 初魅 ……あんなことをして、 今更、容が私を許すと思うか?

voice: 20035040490 テトラ さあねぇ。 それは聞いてみてから考えりゃいいんじゃないか。

voice: 20035040500 初魅 ……だが、私は……。

voice: 20035040510 テトラ ったく、自分は自分はって意固地だねぇ。 まるで昔のあたしを見ているようだよ。

voice: 20035040520 テトラ だからこその忠告さ。 あんまり意地を張りすぎると、いつか後悔することになるよ。

voice: 20035040530 初魅 ……。

voice: 20035040540 おっと。 どこだ~100円……?

voice: 20035040550 あったあった。 セーフ。

voice: 20035040560 voice: 20035040561 ……。 ふぅ。

voice: 20035040570 ん、おっちゃんたちから連絡だ。 今日は麻雀してたのか。

voice: 20035040580 いーなぁ。 アタシも参加すれば良かった。

voice: 20035040590 ……。

voice: 20035040600 何か聞かれるかもとか、考えたってしょうがないのに。 休養もらったとはいえ、下町のみんなと顔合わせるのは気がひけるなんて。

voice: 20035040610 アタシは本当、臆病者だな。

voice: 20035040620 ん?

voice: 20035040630 ……はい。 どうしたの、仁花子?

voice: 20035040640 仁花子 どうしよういるるん、私Eden辞めなきゃいけないかも!

voice: 20035040650 えぇ?

voice: 20035040660 仁花子 私、私……ついうなずいちゃって……! うわああぁーーーー! どうしよういるるん~~~~~!

voice: 20035040670 ちょっとちょっと、落ち着いて!

voice: 20035040680 はぁ、わかった……。 とりあえず会って話そう。